令和4年3月23日、「第8回えどがわ未来カンファレンス」が開催されました。今回も新型コロナウイルス感染症の状況に鑑みて、オンラインでの開催となりました。
令和2年10月に第1回がスタートし、今回が最後となる8回目のカンファレンスには、座長を務める斉藤猛江戸川区長と
- 宗家花火鍵屋15代目・天野安喜子さん
- 総合内科専門医・おおたわ史絵さん
- 東京大学大学院情報学環特任教授・片田敏孝さん
- 国連の友Asia-Pacific代表理事・金森孝裕さん
- 車いすラグビー選手・壁谷知茂さん
- 明治大学経営学部公共経営学科教授・菊地端夫さん
- フリーアナウンサー・久下真以子さん
- アゼリー江戸川チーフマネージャーのグリズデイル・バリージョシュアさん
- 思考家・白土謙二さん
- 講談社FRaU編集長兼プロデューサー・関龍彦さん
- ローマ五輪女子100m背泳ぎ銅メダリスト・竹宇治聰子さん
- 株式会社ロフトワーク代表取締役・林千晶さん
- 東京大学教養学部環境エネルギー科学特別部門客員准教授・松本真由美さん
- 株式会社W TOKYO代表取締役社長・村上範義さん
- 乃木坂46・山崎怜奈さん
- 会社員・山本華菜子さん
- デザイナーのライラ・カセムさん
(五十音順)
の17名の委員が参加。これまでのカンファレンスで議論してきた内容の集大成として策定作業を進めている2つのビジョンの素案が紹介され、それに対する各委員の意見が寄せられました。
江戸川区からの報告
- 「2100年共生社会ビジョン」では、「ともに力を合わせて2100年を迎える江戸川区」と、「力を合わせずなりゆきで進んでいった2100年の江戸川区」という2つの世界に生まれた赤ちゃんの物語からスタート。私たち一人ひとりが考え行動することの大切さを伝えることを説明しました。ビジョン後半では、区が2100年に目指す“ともに生きるまち”の姿を、条例の前文にもある「人」「社会」「経済」「環境」「未来」の5つの視点から描き、区民の皆様に「ともに生きる」とはどういうことなのかをイメージしながら読み進めてもらうような構成にしていることも報告しました。
- 「2030年SDGs=共生社会ビジョン」は序章と5つの章で構成することを報告。序章は「2100年共生社会ビジョン」と同じトーンで作成し、2つのビジョンがつながっていることを表現します。その後、「SDGsの概要や江戸川区が目指す共生社会とSDGsの関係性」を説明する1章、「計画の構成や体系図等を用いて本計画の位置付け」を説明する2章、2030年の未来から27枚の絵ハガキが届くというストーリーで、2030年の共生社会の姿を描く3章、共生社会を実現させるために、SDGsの17のゴールごとに設定した主な目標・具体的な施策を紹介する4章。そして、第5章の計画の実行のための前提となる視点については、現在作成中であること、さらに巻末の資料編では2100年までの江戸川区の人口推計と歳入推計、職員数の推計も記載予定であることを報告しました。
- これらのビジョンの素案を4月1日の広報誌と区ホームページで公表し、区民の皆様から広く意見をいただき、その意見を踏まえてブラッシュアップを図ったうえ、改めてパブリックコメントを実施し、今年夏頃の完成を予定していることを報告しました。
各委員の意見
2100年共生社会ビジョンについて
- 評価できる点としては、やさしい言葉やイラストを使い、みんなが理解できるように工夫していること。2つの未来を対比させて未来を想像させるのはとても面白いアプローチである。
- これまでの手法だけでは解けない課題が増えており、全く違うアプローチでの課題解決手法が必要である。例えば、人口減には世界からの移住の促進、税収減には税を使わない工夫による施策の立案、職員減には区民全員が職員という発想などである。
- 協働は義務ではなく権利であるため、協働をしないことで利益を受けないという印象を与えてはいけない。このストーリーは、5つの「ともに生きる」のうち、やや「人」にのみ焦点があてられているように感じた。
- 多言語化されるとよい。
- 静止画を繋げて音楽をつけて動画にし、YouTubeに流したらよい。
2030年SDGs=共生社会ビジョンについて
- 目標毎にまとめられておりとても見やすい。
- 絵葉書等みんなが自分事化できる工夫はとてもよい。
- 未来からの視点でやるべきことを考えるバックキャスティングの考え方がよかった。
- 2030年までのビジョンであるとともに、理想の2100年を達成するための手段でもあるため、双方に「ビジョン」と付くのは違和感がある。
- 人口推計や職員推計は実績を入れてもよい。
- ビジョンができたあと、例えば評価会議や分科会などを作って、施策をより良くしていくのもよい。
さまざまな意見・感想など
- 徹底的に東京で一番、日本で一番、世界で一番を作るとよい。そのために考えられるのが、「守りとしての水害予防」と「攻めとしてのマイノリティ対応」である。
- 区民の数にKPIを置かず、日常生活の満足度、多文化共生、水害への予防などの指標が日本一になるよう頑張って欲しい。
- 新しい課題に対して新しい取り組みをする。それが生み出される場としての江戸川区になると面白い。
- 80年先だけでなく、1000年先まで考える「サウザンドシティ江戸川区」という見せ方も面白い。
- 言葉だけでは区長が旗振り役となって取り組む方向を示していても、解釈が違ったり勘違いが生まれる可能性もある。ビジョンを冊子として形にすることで、みんなが誤解なく認識できることは重要である。
- 源氏物語など1,000年前の書物を読んでも、心の機微や日本人の感性や幸せ、何に嫉妬して何に喜びを覚えるかは今と変わらないように感じる。100年後に現在の江戸川区のかたちがどうなっているかは想像がつかないが、100年経っても求めているものは同じなのではないか。
- 「教育」と「環境」は、100年後の江戸川区でも変わらず「区が人に対してできる大切なこと」だと思う。
- 江戸川区は2021年には23区のなかで最も転出が多かった区となってしまっている。労働力などの確保のためにも、移民などの受入れを検討する必要がある。
- 外国籍の居住者を増やしていく場合は、国際交流センターなど施設の設置や、国際機関、海外の企業・大学の誘致もすべきである。
- 江戸川区が「自然豊かなところに住みたいが、利便性も捨てきれない」という人にとって住む街の候補のひとつになると嬉しい。
- 他と違う特徴を出すのであれば、「健康に生きられるまち」ということも考えられる。例えば、「アレルギーのない区」というのも良いのではないか。
- 外国の人から「家を借りるのが難しい」という話や「携帯電話を買おうとすると『銀行口座が必要』、銀行口座を開設しようとすると『携帯電話が必要』と言われ、八方ふさがりになって大変」という話を聞いた。「どんな人も受け入れられる江戸川区」というまちにしてほしい。
- 学校のバリアフリーを進めて、「医療的ケア児」が学校に行けるようにすることも大切である。
- 例えば、「メタバース江戸川2100」という仮想空間を作ってはどうか。デジタルとリアルを高度に融合させ、その中で新たな価値を生み出す。そこが誰もが繋がったり、共感できる場所になる。
- 経済・社会・環境の3側面の取り組みにおいて、一般的には経済が弱い。メタバースは、その経済を牽引する1つの可能性である。
- 経済・社会・環境の3側面を統合する取り組みを行って欲しい。そのためには、部局横断型の取り組みが重要である。
- 江戸川区の4年度の事業の中ですごく共感を覚えたのが、「ひきこもりオンライン相談」。いきなりリアルの社会への参加を求めるのではなく、バーチャル空間で居場所を確保して社会的な孤立を防ぐことが良い。こうしたハイブリッドな取り組みは、高齢者など身体面などの制約が理由で外出が困難だった人も参加しやすくなる。
- 江戸川区が力を入れている「eスポーツ」も、障害の有無に関わらず参加できることが魅力。バーチャル空間を活用して、よりフラットな関係構築もできるのではないか。
- 先日の地震で改めて、自分自身も含めて「人は起こってからじゃないと考えない」と思ったので、江戸川区が防災の啓発を行うことの大切さも感じた。
- 成人年齢が18歳に引き下げられたことで若者の政治参加もしやすくなったはずである。若者人口の確保は必要だし、その若者たちに「社会にとって必要であれば関心を持つべきである」と実感するような教育が重要である。
- 職員が一人ひとりの区民の顔をイメージできるような体験をし、職員がここで働いていて楽しいと思える区役所にして欲しい。
- 世の中には「自分が生きている間さえ良ければ」という考えの人も少なくないが、カンファレンスの委員の方々が様々な視点から考え抜いた施策で、今後未来について考える方々がどんどん増えていくことを期待したい。