令和2年12月8日、「第3回えどがわ未来カンファレンス」が開催されました。今回は新型コロナウィルス感染症の感染状況を踏まえて、オンラインでの実施となりました。ニューノーマルの世の中における新たな手法を取り入れながら、江戸川区の未来をより良くしていくアイデアが生まれることを目指します。
3回目のカンファレンスにお集まりいただいたのは
- 総合内科専門医・おおたわ史絵さん
- 車いすラグビー選手・壁谷知茂さん
- 講談社FRaU編集長兼プロデューサー・関龍彦さん
- オランダ語教師のハンス・デ・モスさん
- 乃木坂46・山崎怜奈さん
- 東京大学大学院情報学環特任教授・片田敏孝さん
- フリーアナウンサー・久下真以子さん
- 株式会社ロフトワーク代表取締役・林千晶さん
- 株式会社W TOKYO代表取締役社長・村上範義さん
(五十音順)
の9名の委員です。SDGsの17のゴールのうち9つをテーマに、江戸川区長の斉藤猛が座長を務めながら多様な知見を持つ委員の方々がそれぞれの視点からの意見を述べ合いました。
SDGsの概要と江戸川区の現状について
今回議論の対象となるSDGsで設定されているゴールは
- 3「すべての人に健康と福祉を」
- 6「安全な水とトイレを世界中に」
- 8「働きがいも経済成長も」
- 9「産業と技術革新の基盤をつくろう」
- 10「人や国の不平等をなくそう」
- 11「住み続けられるまちづくりを」
- 12「つくる責任 つかう責任」
- 14「海の豊かさを守ろう」
- 15「陸の豊かさも守ろう」
の9つです。
2回目と同様に、斉藤区長からSDGsの概要や区の考え方について説明したのち、区の担当者が世界と江戸川区の現状を対比させながら説明しました。
委員からの意見
担当者から説明後、委員からは画面共有でのスライドの使用など、オンラインミーティングの機能もフルに活用しながら、様々な意見やアイデアが飛び交いました。
総括的な意見
- SDGsの169のターゲットとは別に、江戸川区ならではのターゲットを設定したい。「江戸川区は17のゴールの中でも、特に〇番のどのターゲットに力を入れています」という取組みから、「江戸川区って〇〇やっている区だよね」と、周りからも言われるようなカラーを打ち出した方がよい
- 「ターゲットを決める」→「特化させる」→「世の中に発表していく」というステップを踏んで、住みたいと思う人を増やしたり、他の自治体からSDGsの取組みについて相談を受けたりするような区になれたらよい。
- 17ゴールの達成を、すべて同時に進めるのは難しい。期間を設定した上で、特に重点的に取り組むゴールを決めるとよい。
- 現在、不都合なことが多く起きているゴールから優先して着手してもよい。
- 課題に対して、通常の取り組みと誰もやらないシンボリックな取り組みを組み合わせて行うことで大きな効果を生むものである。
- SDGs自体の認知度は高まっているが個々の人たちの知識・様式の格差を埋めていくことが今後の課題である。例えば、参加型企画を行うと、参加者は楽しみながら「可視化」された情報によってSDGsを自分ゴト化し、行動変容に繋げることができる。
- SDGs自体の認知度は高まっているが個々の人たちの知識・様式の格差を埋めていくことが今後の課題である。例えば、参加型企画を行うと、参加者は楽しみながら「可視化」された情報によってSDGsを自分ゴト化し、行動変容に繋げることができる。
- 「SDGsに興味はあるけど、何をすればいいかわからない」という人に、アクションの方向性を示してあげるのが自治体・企業の役割だと思う。しかし「押しつけ」や「無理やり」になると今度は反発を生んでしまう。新しい制度や人々の認識について、みんなが徐々に浸透していけるような配慮もしていく必要がある。
Goal 3 すべての人に健康と福祉を
- 日本は医療の面で恵まれた国であるが、それは国民皆保険制度の存在が大きい。この制度が不安定になると、医療にも格差が生じてしまうと感じている。
- 受診に際して、インターネット予約などのデジタル化が進むと、それに対応できない高齢者の受診が遅れ重症化する恐れがある。このような人々を取り残さない仕組み作りが重要である。
- 現在、新型コロナウィルス感染症の影響により、受診を控える人も多い。そのため、オンライン技術も活用しながら、区民の健康を守る取り組みを進めるとよい。
Goal 8 働きがいも経済成長も
- 区が何らかの形で不妊治療への不安を取り除くための施策を行ってもよいのではないか。
- 保育士や学校の先生への投資を積極的に行うことで保育や教育環境を整え、働く女性が安心して子どもを育てられる区にして欲しい。
Goal 10 人や国の不平等をなくそう
- 「知らない」ことが、不平等是正にあたっての一番の弊害となる。
- 健常者にとって当たり前であっても、障害者にとっては当たり前ではないことも多い。この点を意識して施策を考えていくとよい。
- 障害者や外国人への配慮は不可欠だが、過度に特別扱いしてしまうとその優遇ぶりに不満を持つ人が現れる可能性も考慮する必要がある。
Goal 11 住み続けられるまちづくりを
- 自然には「恵み」と「災い」の両面があるが、「災い」ばかりを強調するべきではない。「恵み」を強調してPRし、「災い」には積極的に対策を講じて、水と緑に触れ合い続けられるメリットが、水害への不安を上回るまちづくりをするべきである。
- 水害対策において、小さなことでもよいので区民協働で進めることが重要である。その積み重ねが、「水害への不安」を「プライド」に変えることができる。
- 区民に対して災害リスクを適正に開示し、課題を隠さずに向き合うという江戸川区が行っている公正なスタンスは、区の魅力を発信するうえで非常に重要である。
- 人がその地域に住むとき、地域に一番馴染んでいけるプロセスが「子育て」である。そこに住み、子どもを育て、家庭生活を営んで思い出ができる。特にコミュニティが豊かであれば、皆にとってその地は「住めば都」「住んだら都」になる。
- 車いすの人やその家族は「住む家」の確保も難しく、自分がやりたいことを選ぶのではなく、「車いすでもできることは何か」を探す消去法の人生になっている現状がある。まずは、家や店舗へのアクセスを向上させ、誰もがやりたいことを選択できる社会にしなければならない。
Goal 12 つくる責任つかう責任
- サスティナビリティに資する活動をしている区内企業には、税制面で優遇措置を設けるというインセンティブを与えるなど、江戸川区ならではの仕組みを構築して欲しい。
- 江戸川区が独自で「SDGsポイント」のようなものを作るのも面白い。区民のSDGsへの貢献をポイントで可視化することで、やりがいも生まれると思う。
初めてのオンライン開催ながら、リアルでの開催と同様に様々な意見が出たカンファレンスとなりました。会の終了後には、委員の中から「広い会議室のような用意された場所じゃないからこそ一人ひとりの委員のリアルが感じられて、共感できるところも多くて勉強になりました。『オンラインもいいものだな』と思いました」という声も。次回以降も過去の価値観にとらわれない視点で、江戸川区の大切な未来を語り合っていきます。