この頃よく聞く「ダイバーシティ&インクルージョン(多様性と包摂性)」。大事なことなんだろうけど、あんまり身近じゃないなあ、と感じている人もいるでしょう。これからは外国の人が増えるのかな?LGBTQの人が増えるのかな?という漠然としたイメージで捉えているかもしれませんね。
多様性は、外からやってくるものではありません。実はずっと前から、目の前にあるものです。ただ、これまでは「私たちはみんな同じはずだ」「周りの人と同じようにしなければならない」という意識が強かったために、違いが見えていなかったのです。例えばLGBTQの人も、すでに以前から身近で一緒に暮らしています。でも性的少数者であることが「普通じゃない、あってはならない」こととされてきたため、周りに合わせて、違いがわからないように振る舞ってきた人が多かったのです。その結果、安心して過ごせる場所がどこにも見つからず、生きるのが辛くなってしまうことも。
人はどのような自分で生まれてくるか、誰も選べません。どのように生まれてきても安心して生きていけるような世の中にしましょう、というのが多様性に開かれた社会を作るということです。今まではごく限定的な「ふつう」の枠が決まっていて、そこからはみ出さないように多くの人がしんどい思いをしていたけれど(あなただってきっと経験があるでしょう)、「人はいろんな違いがあるものだ」ということを前提にした社会に変えていきましょう、というのが世界的な流れなのです。その大きな時代の変わり目に、今私たちは巡り合わせているのですね。
違いは、目に見えるものばかりではありません。私は発達障害の一つであるADHD(注意欠如多動症)と診断されていますが、これは脳の機能障害なので外見では分かりません。今これを読んで驚いているあなた、小島慶子のイメージは変わりましたか?ああ、あれってキャラクターじゃなくて障害だったのかあ、まともじゃないってことねと思いましたか。私は何も変わっていません。変わったのは、あなたの捉え方です。では、発達障害を「脳の特性の違い」と考えるのか、「ふつうじゃない人、ダメな人」と烙印を押すのか。前者のような考え方はニューロ・ダイバーシティ(神経の多様性)という概念で、日本でも少しずつ広がりつつあります。
人には違いがあるものです。見ればわかる違いも、見てもわからない違いもあります。違いを避けるのではなく、違っていてもお互いに安心して暮らせる方法を考えましょう。それが共生社会を作るということではないかと思います。
1972年 オーストラリア生まれ。学習院大学法学部政治学科卒業後、1995年にTBSに入社。アナウンサーとしてテレビ、ラジオに出演する。
1999年 第36回ギャラクシーDJパーソナリティー賞を受賞。
2010年に独立後は各種メディア出演のほか、執筆・講演活動を精力的に行っている。
『AERA』『VERY』『日経 ARIA』『講談社mi-mollet』など連載多数。2014年より、オーストラリア・パースに教育移住。
夫と二人の息子はオーストラリアで生活し、自身は日本に仕事のベースを置いている。
2017年 東京大学大学院情報学環客員研究員 ( MeDi )現在、文化放送「大竹まことのゴールデンラジオ」の火曜レギュラーを務める。新刊『おっさん社会が生きづらい』(PHP新書)
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