TOMONI
GO TO 2100 ともに生きる江戸川区

未来へのヒント

HINT

ライブや配信、そして子育てを通じて見つけた子どもたちの“きらめき”

 2007年、海パン姿で「そんなの関係ねぇ」「おっぱっぴー」のキラーフレーズで大ブレイクした小島よしおさん。現在、2020年に開設した自身のYouTubeチャンネル『おっぱっぴー小学校』で子ども向けの情報発信に力を入れられています。子どもと一緒に考え、一緒に楽しむ。自身のWEB連載『小島よしおのボクといっしょに考えよう』(AERA dot.)で子どものお悩み相談にものっている小島さんに、悩む人へのアドバイスのポイントやコミュニケーションで意識されていることを聞きました。

改めてご自身のご経歴を教えてください。

 お笑い芸人をやっています。現在は、子ども向けの活動を中心に、お悩み相談のWEB連載や、「野菜の歌」「算数の授業」などの動画をYouTubeで発信しています。今年は、野菜をネタにしたお笑いコンテスト「野菜―1グランプリ」も開催し、今後より多くの子どもに野菜や農業に興味をもってもらいたいと活動しています。個人的には、2016年に結婚し、2024年2月に長男が生まれました。

小島さんがもつ江戸川区の印象は。

大学在学中の電車通学で知った「東京のはじまり」の地

 家が千葉だったので、早稲田大学に通う際、総武線を利用していました。祖母の家も中野区にあったので、東京の入口が江戸川区でしたね。「東京のはじまり」の印象が僕の中にはあります。葛西臨海水族園などにはよくロケでお邪魔することもありますし、少し下町っぽさの残る雰囲気があって好きですね。昔「豚小屋」という美味しい焼きトンの店にタクシーで行った思い出もあります(笑)。

芸人になるきっかけはなんでしたか。

目立ちたがりの幼少期、大学時代のお笑いサークルが芸人人生のはじまり

 小学生の頃から目立ちたがりで、キャプテンや委員長など、人の前に立つことが大好きでした。2000年に早稲田大学に入学。ある日、僕の2年先輩である岩崎う大さん(現・お笑いコンビ かもめんたる)が所属していたキャンプサークルの歓迎会に行きました。そこでう大さんに「お笑いサークルをやっているから観に来なよ」と誘っていただきました。そこで観に行ったライブがめっちゃくちゃおもしろくて、そのままそのお笑いサークル「WAGE(Waseda Academic Gag Essence)」に入ることにしました。その頃ちょうど、前の事務所であるアミューズさんがお笑い部門を立ち上げ、大学お笑いサークルの大会を開いていました。その大会がきっかけとなり、2001年の在学中にWAGEとしてアミューズに所属することになりました。その後5年ほど活動し、2006年からはピンで活動しています。

2007年の大ブレイク。その後芸人としての苦難も経験する中で、どのような心境の変化があったのでしょうか。

求められる自分と本当の自分とのギャップに苦しんだブレイク時期

 たまたま「そんなの関係ねぇ」が世の中にハマって、番組でネタを出して4カ月たった頃には自分ではコントロールできないまでに盛り上がっていました。次々舞い込んでくる仕事をとにかくこなすことに精一杯で、どの現場でも上手く立ち回れていないと感じていましたし、精神的なダメージが大きかったです。

 ネタをやるだけであれば、まだ自分の表現ややりたいことができていました。しかし1年くらい経つと、「ネタはもういいから、別のものが見たい」になってくるんです。自分なりのトークや得意なジャンルのコメントなどが求められるのですが、当時の僕には難しかったですね。それが「スベリ芸人」という形で定着していったのですが、僕が意図したところではありませんでした。それでもいいからTVに出たい、という心持ちでしたし、もがいた結果でしたね。

意図せず世の中で定着したイメージとの間で葛藤しながらも、どのように“自分”を見つけていったのでしょうか。

一人で抱え込まない 愛あるイジリが僕を救った

 先輩方が飲みに連れていってくれて、「全然ダメだったな~」「ひと言も喋ってなかったじゃん(笑)」といじって笑いにしてもらったことで、救われていましたね。現場での失敗をただ家に持ち帰るだけでは、潰れていたかもしれません。エネルギーが無駄に余っていると、自分を攻撃しちゃうんですよ。人に攻撃されると反撃するし、その反撃にはエネルギーを使います。植物がつつかれて毒を出すことがありますよね。その毒を自分が浴びずに外に出す必要があると思うんです。自分だけで抱え込まず、話を聞いてもらえる場があったことが大きかったと思います。それから十数年。その積み重ねがあったからこそ、現在では自分のできることややりたいことが分かってきた気がします。今はそれを自分のペースでできていますね。

子ども向けコンテンツに注力し始めたきっかけは何でしたか。

 毎年単独ライブをやっているのですが、2011年のライブで先輩から「子ども向けにやってみたら?」とアドバイスをいただいたことがきっかけでした。当時『クイズ!ヘキサゴン』(フジテレビ)に出演していて、「周りはスペシャリストばかりなのに、僕は何かに特化するわけではなく、うまくやれていない」という自責の念がありました。そんなときにいただいたアドバイスだったので、子ども向けに挑戦してみることにしました。元々、「おっぱっぴー」もそうですが、“擬音”が僕自身好きで、波長的に子どもたちと合ったのも大きいですね。でも、後になってその先輩に「あの時は消去法で出したアドバイスだった」と言われて、びっくりしましたが、人生何が当たるか分からないですね。

一般向けのネタづくりと子ども向けでは、どのように違いますか。

 一番大きな違いは「参加型にする」という点です。普通のネタであれば、ネタ途中にお客さんに話しかけられたら怒っちゃいますよね(笑)。子どもはすごく本能的で、“やりたい”と“楽しい”が直結しています。「弱っているから応援してくれ」と助けを求める形や、「もっと大きな声出せるかな?」と対決心をくすぐる呼びかけだと、特にレスポンスがいいです。みんなが本能的に持っている、人を応援したい気持ちや負けたくない気持ちを、素直に出してくれる子どもたちだからこそ、そういった部分を引き出せる内容を意識しています。

小島さんが子どもたちと接する中で感じることはありますか。

子どもたちの純粋な言葉こそが素敵なパワー

 思ったことを思ったままに伝えてくれるパワーがあります。やっぱり大人って一回考えるじゃないですか。「これを言っていいのか」「これを言ったらどう思われるのか」と踏みとどまる部分を真っ直ぐに伝えてくれますよね。先日僕も「そんな恰好で恥ずかしくないの?」と純粋な目で言われました(笑)。疑いとか思惑とかがない言葉ですよね。歳を重ねるにつれて、そういう真っ直ぐな言葉を投げかけられることは少なくなると思います。そういった部分に僕も“きらめき”を感じますし、心魅かれていますね。

WEB連載『小島よしおのボクといっしょに考えよう』には、まさに純粋な子どもたちならではの悩みが寄せられていますね。

 例えば先日「宇宙人が怖くて眠れません」という悩みが寄せられました。宇宙人ってどんなものだろう、と日ごろ絶対自分じゃ考えない思考をすることは単純に僕も面白いです。僕は具体例や経験、事実を話して、「君はどう考えるかな?」と質問で返すようにしています。一方的に決めつけたアンサーで返すのではなく、自分たちで答えを見つけてもらうヒントを僕が出して、選択肢を広げる意識ですね。

 これは実は子どもたちとのコミュニケーションだけに限らないと思っています。例えば部下上司の関係性では、アンサーになりがちですが、「こういう考えややり方はあるけど、どう?」とクエスチョンで返すことで、相手は考えて成長するし、「ありがとうございます」で終わっていたコミュニケーションはもっと活性化するのではないかなと思います。僕自身、後輩芸人にアドバイスするときも同じように意識しています。

コンプレックスや人間関係の悩みも多く寄せられています。小島さんが意識されていることはありますか。

肯定からコミュニケーションをはじめる

 必ず「いいじゃん」と認める言葉を投げかけるようにしていますね。自分が出来る事が人に出来る事では決してありません。僕も昔は自分のものさしで測って、注意に近い決めつけのアドバイスをしていました。犬の被り物をしている後輩芸人がいるのですが、辰年の時、「辰でいけよ」と昔なら言っていましたけど、それだと後輩もプレッシャーだし、そこから発展しないですよね。「今年の干支辰だから、辰も面白いんじゃない?どう?」とクエスチョンで投げかけることで、彼の個性を否定しないことになるんじゃないかなと思います。

子育てに関して、ご夫婦間で大切に思っていることはありますか。

相手をリスペクトすること 違った意見も認め合う意識が大切

 子どもが成長していくにつれて、習い事や学校など、考えることは沢山でてきて、夫婦で違う意見になることも必ず増えていくと思います。先日奥さんとも、「お互いの意見があるのは仕方がないこと。そこを、人格を否定することとはイコールにしないようにしよう」と話しました。夫婦でも違う人生を歩んできて、違う常識がお互いの中にあります。その常識が「子育て」という共同作業のなかでぶつかり合うのは当たり前なことです。けど、子どもを大切にしたい気持ちや自分にできる精一杯をしてあげたいと思うことは一緒なんです。その根底の部分を忘れずにいなきゃいけないと思っています。頭ごなしに否定やアドバイスするのではなく、相手の常識や感覚の違いを認めた上で、意見を言うことを意識しています。

 僕の仕事上、奥さんに子育てを任せる部分が多くなっているのも事実です。ただ、よくあるような「俺は仕事して、お金稼いでいるんだから」「ならお前がこの仕事してみろよ」というな考えは絶対にしないようにしています。それは奥さんも同様です。自分ができること、相手ができることをリスペクトして、互いに精一杯やることが、重要だと思います。

この連載のテーマ「ともに、生きる。」。小島さんは子どもたちに共生社会の意味をどう説明しますか。

自分の生活を想像する そうすると一緒に生きる人が見えてくるはず

 家を出て学校に行くまでに何があるだろう?道路を歩く、でもそこを安全に通るためには信号が必要で、それをつくる人が必要なはず。何か好きなものはあるだろうか?サッカーなら、ボールをつくってくれる人や一緒にやってくれる仲間も必要なはず。――そういう風に一日の過ごし方を聞いて、そこに関わる人がどのくらいいるのかを具体的に話しますね。「一人では生きていけないから相手を尊重しなくちゃいけない」と言葉にしても、具体的なイメージがつかないと理解できないはずです。具体的な人が思い浮かぶことで、日頃から“協力しよう”“助け合おう”“感謝しよう”という、いわゆる共生社会の考えが、子どもたちのなかに自然に生まれてくるのではないでしょうか。

プロフィール

小島よしお

小島よしお(こじま よしお)

2001年より早稲田大学在学中の5人によるコントグループ「WAGE」のメンバーとして活躍。
その後、ピン芸人として活動開始。
2007年5月、Youtubeにて小島よしおの動画が週間再生ランキング世界5位になり、一躍注目を浴びる。
早稲田大学卒業の高学歴を活かし、クイズ番組などにも多数出演。
抜群の運動神経を持ち合わせ、その芸風やポジティブな人間性から近年では全国の子供たちから絶大な支持を得る。
2020年5月、コロナ自粛中の子供たちのために算数を教える動画が話題になり、
現在では朝日新聞社AERA.にて子供に対してのお悩み相談が話題になるなど、活動の幅を広げている。