TOMONI
GO TO 2100 ともに生きる江戸川区

未来へのヒント

HINT

希望ある未来を、無理なく一人ひとりがつくれる社会に

 モデルだけでなく、テレビの報道番組でもコメンテーターとして活躍するトラウデン直美さんが考えるマイペースな取り組み方。
 「ともに、生きる。」をスローガンに、すべての人が暮らしやすいまちづくりを推進する江戸川区では、これまで「SDGs FES in EDOGAWA」や、次代を担う子どもたちが区の未来へ向けて発信する「江戸川区SDGs中学生議会」で、トラウデン直美さんに参加いただきました。2020年には環境省プラごみゼロアンバサダー、21年からは環境省サステナビリティ広報大使に任命されたトラウデンさんに、自身のSDGsへの取り組みや未来に対する思いを伺いました。

トラウデンさんのご経歴をお教えください。

日本人という自覚と
ドイツ人としてのアイデンティティ

 父がドイツ人で、母は東京の人です。よく「どこから来たの」と聞かれますが、私自身は生まれも育ちも日本で、18歳までは京都で育ちました。外国人が多いエリアで過ごし、さまざまなバックグラウンドを持った人たちが集まる公立の中学校に通った経験は、人にわかりやすく意見や情報を伝えようという今の考えにつながっています。「私は日本人だ」という自覚はありつつ、ドイツのルーツも持ち、ドイツ人としてのアイデンティティも持ち合わせています。そういう面では、昨今よく言われる多様性みたいなものは、家の中でも常にあったと感じています。

 環境問題やSDGsに興味をもつようになったのは、父の影響が大きかったです。父は森に行くことやキャンプが好きで、幼い頃から自然の多い場所へ連れて行ってくれました。また高校はスーパーグローバルハイスクール指定校で、私はグローバルアンダースタンディングスキルズという選択授業を取っていました。その中で毎週、気候変動や海洋汚染、プラスチック問題など、本当に様々な環境問題に関することを勉強させてもらったというのは、大きなきっかけだったと思います。

SDGsに関する話題を発信する際に、心掛けていることはありますか?

自分自身が「持続可能」であり続けられる
ペースで

 最初、自分の考えを発信し始めた頃は、こんなにも様々な反響があるのかと、衝撃を受けました。当時は私自身も世間知らずだったと思いますし、多様なバックグラウンドをもった人たちに対して、どういう風に伝えるのがいいのか、考えられていなかったのかもしれません。今も模索中ではありますが、なるべく楽しく、同じように思ってくれる人が少しでも増えるようにと思って発信しています。全員に伝わらなくてもいいけど「そういうのも大事だよね」と考えてもらえるきっかけを、私の発信にふれた人の中に、少しでも届けられたらいいと、心掛けています。

 今は情報がありすぎて、悲観的な情報も多くなっています。不安になっていろいろと調べても、心が疲れてしまうし、自分を不安にさせるものや怖いと感じるものはシャットダウンしたくなっちゃうと思うんです。それよりはなるべく楽しく柔らかい形で、長期的に向き合いたいと思えるものとして発信することを心掛けています。SDGsも持続可能な開発目標と謳っているように、心がもたなかったら持続可能ではなくなってしまうので、長く続けていくために、情報の見方や発信の仕方も、人との繋がりも、なるべくプレッシャーを感じすぎないよう、一歩一歩進む形にできたらいいですね。

遠くて大きい目標のようにも感じてしまいがちなSDGsを、
自分ごととして取り組むにはどうしたらいいでしょうか?

 自分ごとに落とし込むには、体験が必要だと感じています。私もいろいろなことを調べたり見たりしますが、実際に自分の目で見たことの方が体験として記憶に残っています。例えば、河川の氾濫を見た体験があれば危機感を持てると思いますが、そうじゃないと「大変そうだね」で終わってしまう気持ちもよく分かります。自分の住んでいる地域や職場で、自分の生活圏にどんなリスクがあるのかをチェックした時に初めて、自分ごとになるんだと思います。また自分の身近で起こった小さな変化、例えば「今年はサンマが高くて食べられないな」といったことにも目を向けて、疑問に感じることで、その先にある環境問題にも気づくきっかけになるのではないでしょうか。

 私のSDGsはまず、生活周りのことです。例えば家の電気を再生可能エネルギーのものに変えてみるとか、マイボトルやマイバッグを使うとか、あとはキッチンのスポンジをヘチマのものにするとか。生活の中に取り入れやすいことから始めています。他にも、環境や社会課題への取り組みを積極的に行っている企業から商品を購入したり、考えてみたりするのも、行動に取り組むきっかけとしておすすめです。

 また、私はモデルなので洋服関係のことは特に気になります。古着を買ったりもしますし、自分が着なくなった服は、古着に出していました。しかし、これも調べてみると、発展途上国で服が山積みになってしまうという問題があると知り、今はリメイクしてもう一度着てみたり、母親や友人に譲ったりするようにしています。

 新しい洋服を買う時にも、安さだけを求めすぎないようにしています。安い洋服を色々試すのってすごく楽しいけどその分捨てなきゃいけないものも増えてしまうし、作ってくださっている方の顔がどうしても見えなくなってしまいます。2着買うよりも「本当に好きだな」って思えるものを1着買うみたいな気持ちにシフトしていけたらいいなとは思っていますね。

これまで江戸川区のSDGsの取り組みにご参加いただいた印象をお聞かせください。

子どもたちの未来を輝かせるために
何ができるか

 「SDGs FES in EDOGAWA」や「中学生議会」に出させていただいてお話を伺ったり、いらっしゃる皆さんを見る中で感じたのは、ご家族連れの方が多いということ。お子さんがいる家庭が多いということは、お子さんの未来がいいものであってほしいと願う親御さんがたくさんいらっしゃるということだと思うので、江戸川区は未来への希望がたくさんあって、子どもたちにいい未来を残そうとするパワーが大きい場所だと感じました。

 未来はこれから来るものではなく、今、目の前にいる子どもたちだと思っています。私は以前から、子どもたちのために何か取り組みたいと強く思っていて、自分の子どもやその友達が「楽しいな、幸せだな」って思える世界であってほしいと願っています。子育てされている方はみなさん同じだと思うんです。そのために何が残せるかを考えられるのは幸せなことで、ちゃんと実現したいと思っているので、目の前にある未来を輝かせるためにできることは、ずっと考え続けています。

 特に今の子どもたちは、心の部分で閉塞感があったり、制限されていることが多いとも感じます。私自身やんちゃに怪我もしながら過ごした子ども時代は、達成感を覚えた出来事のひとつです。今の子どもたちにも、もっといろいろなことにチャレンジできる環境があるといいと思います。チャレンジしてみて「あれは私には合ってなかったな」とか「失敗したけどやっぱりこれが好きだ」と思えるのは、いい経験になると思うんです。だから、いいことも失敗も経験できる環境が、たくさんあってほしいですし、つくっていきたいです。

江戸川区では区内9ヶ所に「なごみの家」を設置しています。また引きこもりの方たちが中心となって、昨年度は駄菓子屋さんをオープンしました。

 最近は不登校の話題も出ますが、不登校や引きこもりたくなる時期は大小あれど、誰しも経験があるのではないでしょうか。それが身を守る方法だとすれば、心の平和を保つためにそれ自体はいいことだと思うんです。同じように辛い思いをして不登校や引きこもりになっている人たちに、説得力を持って語りかけるには、同じ目線を持つ人の方が、より一層寄り添えると思います。辛い思いをした経験だったかもしれないけど、その経験が人のためになったと思えるように、少しずつ解きほぐしていって、同じように辛い思いをするかもしれない未来の人たちを救うパワーとなってもらえたらと思います。

 「なごみの家」や駄菓子屋さんの取り組みも、立ち寄って少し挨拶していくだけでもいいわけじゃないですか。外との繋がりを少しずつ持っていくことは、大事な気がします。私、駄菓子屋さんがまた増えてほしいんですよね。子どもたちを見守ることにも繋がるし、子どもたちがお店で買い物をするっていう経験でもあるし、地域との繋がりをつくれる駄菓子屋さんって実はものすごく重要だったんじゃないかと今、思っています。

 子どもたちや多様な人々が集まって、つながりが持てるような場所が増えれば、みんなが生きやすい未来につながっていくんじゃないかと思います。そのためにもまず、自分の身の回りのことや、周囲の人のために、できることを一歩一歩、自分のペースで続けていこうと思います。

プロフィール

トラウデン直美(とらうでんなおみ)

トラウデン直美(とらうでんなおみ)

1999年4月生まれ。京都府出身。慶應義塾大学卒業。
「2013ミス・ティーン・ジャパン」でグランプリを受賞。
13歳で小学館「CanCam」の史上最年少専属モデルとしてデビュー。
2021年7月発売のCanCam9月号にて、専属モデル歴史上最長記録を更新。
雑誌やファッションショーのほか「日経ニュース プラス9」「めざまし8」「news23」など報道や情報番組でも活躍中。
2021年1月より「環境省サステナビリティ広報大使」を務める。