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未来へのヒント

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女優として人の心情に思いを馳せる日々。それは「共生社会」の実現にも通じる

 「ともに、生きる。」をスローガンに、お互いの個性や違いを認め合い、立場の垣根を越えてすべての人が暮らしやすい社会づくりを推進する江戸川区。ドラマや映画、情報番組など多彩なフィールドで活躍する女優の川島海荷さんは、芸能活動の傍ら大学に進学し、学びの機会に自ら挑戦してきました。刺激に満ちた新たな出会いを通じて得た気づき、女優業に臨むうえでの心得、次世代を担う立場から思い描く共生社会像を話していただきました。

川島海荷

川島さんのご経歴をお教えください。

社会問題・環境問題に関心をもつきっかけになった情報番組出演と大学進学

 12歳の時に芸能界デビューして以来、ドラマや映画、舞台など様々な作品に出演させていただき、現在は並行して国際女性デーにちなんだイベントへの出演など、新しい活動にも取り組んでいます。そのきっかけとなったのが、2016年の情報番組『ZIP!』の総合司会就任です。最新のニュースや話題に日々触れるなかで、世の中の出来事に関心が高まる貴重な経験でした。

 「ZIP!」出演と同様に、大学進学も私にとっての転機になりました。もともと歴史や世界の成り立ちを知るのが好きで、大学で勉強できると知り現代社会学を専攻しました。今を生きる人間として社会を知る過程は、これからの未来を生きていくなかで必要になると思ったからです。心理学と関連付けて社会について学べる点も、役柄や作品背景の理解力を高めることから、女優業に活かせると考えました。

川島海荷

 大学のゼミでは農業について勉強しました。座学だけでなく外国籍の方々に農業を教えている学校で有機栽培を勉強する機会もありました。国によって自然環境が異なるなか、自分の国で農薬・化学肥料を使わずに食物をつくる方法を見出そうと試行錯誤する姿に刺激を受けました。私自身の食生活や環境への意識を見直すきっかけになり、その後の電力問題をテーマとした発電に関する論文作成にもつながりました。

 大学は一個人としての川島海荷を成長させてくれました。私自身、周りの人からすると話しかけにくいという自覚があり、そのイメージを変えるために自分から会話に参加することを意識しました。時間が経つにつれて話しかけにくくなるので、入学したての最初が肝心です。教室で席が近い人たちに、講義のわからない部分を質問したり、一緒にランチを食べようと声をかけたり。コミュニケーションに関しては積極的に行動を起こすのは苦手でしたが、勇気を出したことで自分の殻を破れました。「私は変わっていかなきゃいけない」と思えたタイミングで、しっかりと行動に移せたから成長できたと実感しています。卒業してからも同級生たちとは関係が続いており、舞台で地方を訪れた時には観に来てくれたり、ドラマやバラエティ番組に出演するたびに感想を伝えてくれます。芸能界にいるとどうしても“出る側”の視点になりがちなので、“見る側”の視点から噓なくフラットに意見してくれる友人たちはかけがえのない存在です。

10代から20代の様々な学びや刺激は、現在の女優業にどのように活かされていますか?

女優としての信条は「人を理解する」こと。決めつけを無くし、少数者にも思いを馳せる

 なにかしらの役柄を演じるにあたり、当事者について思いを馳せながら、リアルな現場を観察するのが大事だと思うようになりました。役を理解するうえで「普段どんな生活をしているのだろう」と妄想を広げるのが習慣になっています。例えば喫茶店の店員を演じる場合は、喫茶店で働いている方の所作や癖を間近で勉強させていただくのが一番です。私と役柄は違う人物であり、考え方や立場が異なっていて当然です。ただ、お互いに共感できるポイントは必ずあるはず。その共通点に至るまで色んなきっかけを積み重ねる過程が大事だと思います。

 当事者の人生に思いを巡らせるのは、私が演じる役柄だけではありません。一般社会のように、同じ空間で生きる登場人物のことも理解しようと努めています。今年6月に主演を務めた舞台『君しか見えないよ』では、同性愛者の母をもつ娘役を演じました。“ふつう”という物差しが未だに根強く残る社会では、母も娘も複雑な心境で生活しているはずです。それでも、性的指向が異なっているだけで普遍的な考え方があると考えて、作中で起きる様々な事象に応えていきました。

 最近ではLGBTQが映像作品や舞台作品でも取り上げられるようになりました。個人的には一人の人間としてどんな人を好きになってもいいと思いますし、私自身はそうした方々の考えを受け入れたいです。LGBTQの割合は人口の約10%と言われていますが、色んな方から話を聞くともっと多い印象を受けます。それは時代に応じた価値観の変化であり、私も女性の方を見て「かっこいい」と思ったりします。同性に対してポジティブな気持ちが生まれるのは自然なことですので、従来の価値観が立ちふさがり感情が制限される社会ではいけないと思います。すべての人が心を解き放ち自由に過ごせる世界がいいですね。最近はバラエティ番組などを見た方にも「川島さんは自由人でしょ?」と聞かれますが、本当に自由に、ありのまま過ごせる方が好きなんです。

川島海荷

SDGsについて取り組んでいることはありますか?

ちょっとしたことから始められる社会貢献がSDGs

 エコバッグを常に持ち歩いてレジ袋を使わないようにしています。レジ袋が有料化になる以前から、海外旅行で訪れた先々でレジ袋が有料だったため、エコバッグを生活に取り入れていました。なかには「節約するために有料レジ袋を使わないようにしよう」といった自己の利益からエコバッグを使っている人もいるかもしれませんが、どのようなきっかけであれSDGsにまず取り組むことが大事なのかなと感じています。資源に限りある地球で生きていくには、電気をつけっぱなしにしない、使い捨ての耐熱ラップから繰り返し使えるシリコン製ラップに切り替えるなど、日常のちょっとした無駄をなくす積み重ねが環境のためにもなるので、身近なところからSDGsに貢献できるよう、私自身も行動しています。

 また、SDGsは国籍や人種、宗教などの垣根を越えて世界中の人が協力して取り組むべき課題であるため、お互いに意思疎通を図るためのコミュニケーションも重要です。日本人はどちらかというとシャイな性格でおせっかいが苦手。でも、意外と相手は気にしていないのではないでしょうか。私も奥手な性格でしたが、最近では外国籍の方にも積極的に話しかけられるようになりました。たどたどしい英語でも相手はやさしく耳を傾けてくれるのでうれしいです。思い込みをなくして心の距離を気軽に縮めていける関係性こそが、みんなが幸せに暮らせる社会づくりの土台になると思います。

異なる背景をもつ人々がともに生きる「共生社会」についてどのような考えをもっていますか?

共生社会の第一歩は「人を理解し、受け入れる」

 みんなで理想のまちをつくり上げるからには、お互いに協力し合う風土があると実現しやすいのかなと感じます。その点でいうと、外部からの人口流入が多い都市部よりも、限られた人たちが関係性を深めている地方部の方が成立しやすいのではないでしょうか。私が生まれ育った埼玉県新座市では、ご近所に中国などのアジア圏出身の方がいて、現地の民族衣装を着せてもらったり、異なる文化を体験できて楽しかった記憶があります。その土地に古くから息づく文化を継承しながら、諸外国の新しい文化を受け入れて“これからの文化”を一緒に創出できれば街は一層華やぐと思います。

 江戸川区は約120の国と地域の方々が暮らしているとお聞きしました。小岩など下町情緒のある落ち着いた雰囲気が印象的でしたが、街のなかには多種多様なバックボーンをもつ方々が共生しているんですね。外国籍の方々にとって日本という異なる地での生活に馴染むことは簡単ではないと想像できます。決まりごとやマナーなどを日本特有の“察する”方法で覚えることは難しいはずです。そのハードルを、「ともに、生きる。」というキャッチコピーを旗印に、外国人向けの生活情報ガイドブックの作成や多言語通訳タブレットの導入、共生社会に関する絵本制作などに取り組んだ結果が、一人でも多くの外国籍の方に喜ばれているといいですね。私はカレーが大好きなので、近いうちに江戸川区で本場の味を堪能しつつ、商店街を散策しながら色んな方々と交流してみたいです。

川島海荷

 女優業や大学生活、SDGsに関わるなかで、私のなかに「人を理解し、受け入れる」精神が息づいています。仕事やプライベートでは色んな人との出会いにも恵まれ、相手を知ることが新たな気づきを呼び起こすという好循環が生まれています。そんな学びに満ちた生活を経て、今では女優業や作品を多角的な視点で観察できるようになり、芝居がさらに楽しくなっています。今後はどんな役柄でも挑戦したいという気持ちであふれています。ひとつの物事を突き詰める職人や、子どもたちに道を指し示す教師など、新しい川島海荷を披露していきたいです。そして、私が色んな方々から刺激や気づきをもらったように、作品を通じて人生観や生活を変えるきっかけを提供できるよう、これからも社会のなかで勉強し成長し続けます。

プロフィール

川島海荷

川島海荷

1994年3月生まれ。埼玉県出身。
2006年女優としてデビュー。以降、『怪物くん』シリーズや、ドラマ『ぴんとこな』、『SPEC~零~』、『僕らは恋がヘタすぎる』大河ドラマ『花燃ゆ』、『いだてん~東京オリンピック噺』、映画『ヤウンぺを探せ!』など数々の作品に出演。舞台では、PARCO PRODUCE『ブライトン・ビーチ回顧録』、『こどもの一生』、『きっとこれもリハーサル』、『キングダム』などで活躍。また、映画やドラマだけでなく、情報番組『ZIP!』の総合司会も務めた。浅草九劇×BS松竹東急 演劇&スペシャルドラマ『君しか見えないよ』に主演にて出演。8月にはPARCO劇場開場50周年記念シリーズ『桜の園』の出演が決まっている。