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江戸川区平井を起点としたライオンのSDGsへの挑戦!!
~「サステナブルな地球環境への取組み推進」と「健康な生活習慣づくり」の達成へ~

2021.03.11

 江戸川区平井に研究開発本部を持ち、主に環境面で江戸川区とも連携し取組みを行っているライオン株式会社。同社は、2030年に向けて「次世代ヘルスケアのリーディングカンパニーへ」という目標を掲げ、「今日を愛する。」というコーポレートメッセージのもと、創業以来の一日一日を大切にする精神で取組みを続けています。 同社は近年、SDGsに関する取組みを加速させており、今回はその中心として舵取りを担っているサステナビリティ推進部長の小和田みどり様、研究開発本部戦略統括部長の曽我晶子様にお話しを伺いました。

江戸川区内にある平井事業所

江戸川区内にある平井事業所

ヘルスケア分野全体に幅広い商品を持つライオンは、SDGsの取組みをどのように進めていますか?

キーワードは“リ・デザイン”

 SDGsの目標の実現に向けて重要なことは、生活習慣を時代の変化に応じて“リ・デザイン”することです。そのための最重要課題が、脱炭素社会や循環型社会の実現を進める「サステナブルな地球環境への取組み推進」と、「健康な生活習慣づくり」へのアプローチです。

 「サステナブルな地球環境への取組み推進 」のため、2020年には「LION Eco Challenge 2050」を策定し、事業所におけるCO₂排出量ゼロや、プラスチックの高度な資源循環、持続可能な水使用の実現を明記しました。この計画では、まず2050年のあるべき社会の姿を設定し、そこから逆算して2030年に達成すべき具体的な数値目標も設定しました。

「手洗い」と「オーラルケア(口の中の健康)」

江戸川区内にある平井事業所

江戸川区内にある平井事業所

 また、「健康な生活習慣づくり」では、「手洗い」と「オーラルケア」について、特に力を入れて推進しています。今回のコロナ禍により世界中で手洗いニーズが高まっていますが、正しい手洗いについての認識が不足している地域も多くあります。そこで、自社ブランドである「キレイキレイ」を積極的に活用し、日本に限らず、海外でも正しい衛生習慣の普及活動を進めています。

「日本中の子どもから虫歯を無くそう」というコンセプトのもと開催している、「全国小学生歯みがき大会」

「日本中の子どもから虫歯を無くそう」という
コンセプトのもと開催している、「全国小学生歯みがき大会」

 「オーラルケア」については、かねてから「日本中の子どもからむし歯を無くそう」というコンセプトのもと、「全国小学生歯みがき大会」等の活動も続けており、いまや小学生のむし歯罹患本数は1本を切るほどとなっています。そうした活動の発展形として、現在、取り組んでいるのが「インクルーシブオーラルケア」です。生活環境、身体、経済、教育・情報などの状況により生じたオーラルケア機会の格差を解消し、誰ひとり取り残さず、すべての人にオーラルケアの機会をサステナブルに提供することで、人が本来もっている「健やかに生きる力」をオーラルケアから引き出し、育むことを目指す活動です。

 このような活動を通じて子どもから高齢者まで誰もが、これまで当たり前だった生活習慣を時代の変化に応じて“リ・デザイン”して、脱炭素社会、平等な社会を実現していければと思っています。

江戸川区平井にある事業所の役割は何ですか?

ライオンは、2030年に向けて「次世代ヘルスケアのリーディングカンパニー」を目指す

ライオンは、2030年に向けて「次世代ヘルスケアのリーディングカンパニー」を目指す

プラスチックの高度な資源循環を実現する、「3R+R」

衣料用液体高濃度洗剤『トップスーパーNANOX』は、100%リサイクルペットの透明容器 * を採用 * ボトル式のみ。ノズル部、キャップ部等は除く。

衣料用液体高濃度洗剤『トップスーパーNANOX』は、
100%リサイクルペットの透明容器 * を採用
* ボトル式のみ。ノズル部、キャップ部等は除く。

 江戸川区平井事業所にある研究開発本部では、イノベーション創出によって次世代ヘルスケアのリーディングカンパニーを目指すライオンの原動力となるべく、日々様々な製品の開発・研究を行っています。環境対応にあたっては、特に力を入れているのが「Reduce(リデュース)・Reuse(リユース)・Recycle(リサイクル)+Renewal(リニューアル)」の「3R+R」と呼ばれる分野です。

 具体的には、プラスチックの高度な資源循環を研究しています。リデュースでは、商品の容器・包装の見直しでのミリグラム単位の削減や、洗剤等の濃縮による容器の小型化を進めています。リユースでは、弊社に限らず、業界全体がつめかえ製品の割合を増やすことで、容器の再利用を進めています。 さらにリサイクルでは、再生ペットや古紙パルプを積極的に利用しています。加えて植物由来のプラスチックであるバイオマスプラスチックのような再生可能な原料を使い、石油由来のプラスチックの使用量を削減しています。

企業の枠を超えた連携

 しかしひとつの企業が単独で対策を進めても、その規模や技術開発には限界があるものです。2030年の目標を達成するため、経済産業省の「クリーン・オーシャン・マテリアル・アライアンス」や化学業界が参加する「海洋プラスチック問題対応協議会」、環境省の「プラスチック・スマート」等へ参画しながら、業界の垣根を超えた環境対応技術開発にも取組んでいます。 また同じ業界の中でも、花王株式会社様と協働し、使用済みつめかえ用フィルム容器をリサイクルする取組みも始めました。「環境においては競争ではなく協働」という考えで、両社で手をとり合うことになりました。地球規模の環境問題を解決するためには1社の力だけでは限界がありますので、こうした協力体制も必要だと考えています。

江戸川区で未来の研究員を育てる!

江戸川区科学教育センターとの連携

 江戸川区科学教育センターと連携し、区内の小中高生に平井研究所が持つノウハウを活用した科学の実験教室を多数開催しています。

えどがわエコセンターとの連携

 「えどがわエコセンターと連携し、ラムサール登録湿地である「葛西海浜公園」のなぎさに漂着したゴミの清掃等の自然環境保全活動を通じて、江戸川下流や東京湾を生物が暮らしやすい環境へ整える施策を推進しています。」

 この他、平井研究所では、内閣府男女共同参画局が推進している「リコチャレ」やSSH(スーパーサイエンスハイスクール)指定校の理系学生に向けた教育支援活動等の活動を通じて、たびたび話題となる“理系離れ”対策として理科の楽しさを伝えるお手伝いをしています。参加した生徒の皆さんからも「実験や展示などが面白く、理系にさらに興味がわいた」「日々使っているもののしくみがわかって、とても勉強になりました」「理系に進んだ女性社員の考えや、今後やりたいことなどを聞くことができ、自分の進路について参考になった」と好評です。 子どもたちの真剣な表情を見ていると、これから技術や知識を身に着け、新しい時代を形作っていって欲しいと強く思います。

理系の楽しさを伝えることも、未来の研究員を育てることにつながる

理系の楽しさを伝えることも、未来の研究員を育てることにつながる

他自治体との連携

(1)「キレイキレイのまち坂出プロジェクト」(香川県坂出市)

 「キレイキレイ」ブランドを製造する工場のある街である坂出市全体を、手洗い推進の街にし、健康・衛生の気運を高めようというプロジェクトです。

(2)「ライオン 美ら action」(沖縄県の12の小中学校)

 教育委員会と連携し、小中学校でのエコ活動を支援する取組みです。

(3)「夫婦円満都市推進プロジェクト」(佐賀県・山形県山形市・宮城県石巻市ほか)

 夫婦間の家事に対する認識のギャップを埋めるためのセミナーを実施しています。実践を交えたセミナーを通じて、家事からジェンダーギャップを解消し、家庭がハッピーになることを目指しています。

家事からジェンダーギャップを解消し、家庭がハッピーになることを目指して実施している、「夫婦円満都市推進プロジェクト」

家事からジェンダーギャップを解消し、家庭がハッピーになることを目指して実施している、「夫婦円満都市推進プロジェクト」

企業としての今後の目標と江戸川区との更なる連携

 企業としては、「LION Eco Challenge 2050」のもと、2030年・2050年の目標の実現に向けて邁進していきます。しかし、「地球や環境に優しい製品」であっても製品の値段が高いままでは消費者は振り向いてくれないでしょう。環境に配慮しながらも、コストダウンしていく部分をしっかりと見極めてバランスを取っていく。大変な道のりであることは承知していますが、そこをクリアするための努力を惜しまないのが企業の責任だと考えています。

 一方、SDGsの推進に向けては企業単体での取組みには限界があります。幸い、これまでも様々な連携を行ってきた江戸川区がSDGsの推進に向けて本気で取り組み始めたとお聞きしています。弊社ではさまざまな自治体との取組みも行っていますので、今後、江戸川区とも更なる連携を進め、官民一体となって取組みを進めていきたいと考えています。

今回の話を聞いた方
(※記事中の役職名は取材当時のもの)

小和田みどり 氏

小和田みどり 氏

ライオン入社後、販売店営業を担当。 商品開発(ビューティケア)や宣伝等のマーケティングに従事。2015年、宣伝部長。2020年1月、CSV推進部長。2021年1月よりサステナビリティ推進部長。(21年よりCSV推進部はサステナビリティ推進部に改称)

曽我晶子 氏

曽我晶子 氏

ライオン入社後、皮膚科学やオーラルケア(歯磨剤)の研究開発に従事。2019年8月より、研究開発本部 戦略統括部長.

ライオンの企業概要

1891年に「小林富次郎商店」として創業。現在の社名は、1896年に製造が開始された「獅子印ライオン歯磨」に由来しています。以来、石鹸や歯みがきの製造・販売を中心に様々な商品を取扱い、今ではオーラルケア用品で国内ナンバーワンのシェアを獲得しています。現在の事業領域は、化学品や業務用洗浄剤といった産業用品事業や、アジアを中心に8つの国と地域に展開する海外事業。さらには売上の6割を占める一般用消費財事業で構成されています。一般用消費財には「クリニカ」をはじめとしたオーラルケアや、「キレイキレイ」を中心として国内シェアナンバーワンのハンドソープが属するビューティケア、衣料用洗剤・柔軟剤といったファブリックケア、台所用洗剤や住居用洗剤が含まれるリビングケア等、多岐にわたる事業を展開しています。現在では連結の売上で3,553億円(2020年実績)の規模となっています。

家事からジェンダーギャップを解消し、家庭がハッピーになることを目指して実施している、「夫婦円満都市推進プロジェクト」