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未来へのヒント

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コミュニティを発展させるためにできることとは?

 田村淳さんが主催している「田村淳の大人の小学校」は、年齢も仕事も国籍も価値観もまったく異なる人たちが集うオンラインコミュニティです。開校から約2年、“児童”と呼ばれる会員が1000人を超え活動が活発化している今、田村さんからコミュニティ発展の理由について話を伺います。オンラインコミュニティの話の中からは、“まち”というコミュニティ発展へのヒントも見えてきました。

田村淳 氏

田村さんはなぜオンラインコミュニティを始めたのですか?

「大人の運動会」の開催で、現代に不足していたコミュニティの役割や大切さを実感した

 元をたどると、「大人になると決まったエリアでしか友達を作る機会がない……」と、知り合いから相談を受けたことがきっかけでした。その相談を受けた後、ぼくが考えたのは「大人の運動会」というイベントです。大人の運動会は、その名の通り、運動場に18歳以上の大人が集まり綱引きや玉入れ、徒競走といった競技をチーム制で競うもの。毎回数百人が集まり、もう10年近く続けています。

 チームは初対面の人同士で構成するので、運動会の開始直後は少しぎこちなさがあるのですが、最後のリレーの時には驚くほどの一体感を見せてくれるんです。仲良くなったメンバーで飲み会を開いたり、運動会で出会った人同士で結婚したりするなんてケースも出てきました。そんな、みんなの様子を見ているうちに、現代に不足していたコミュニティの役割や大切さを実感したんです。そこで、多くの人が参加しやすい形態のオンラインコミュニティ「田村淳の大人の小学校」を立ち上げました。

 「田村淳の大人の小学校」は月に2回、ゲスト講師とぼくが対談をする特別授業のほか、企業と共にアロマオイルやビールなどのオリジナル商品の企画・開発をしています。そして、ぼくを含め、コミュニティに所属する人全員が、専用のコミュニケーションプラットフォームで日常的に情報交換できるフラットな環境が特徴。ぼくはコミュニティ内では“校長”という運営側の肩書ですが、児童から学ぶこともたくさんあるんです。ぼくだけが強い発信力を持って、一方的にコンテンツ提供するのではなく、一人ではできないことをみんなで形にしながら学び合っていくという場にしました。

 オンラインコミュニティは2020年に開校してから良い形で発展したと感じています。それは、ぼくが仕掛けなくても、児童同士で化学反応が起きているということ。彼らは、サービスを受けるだけではなく、自主的にクラブ活動を立ち上げ、仲間を募って活発に動いています。ジャンルはアート、エンタメ、スポーツ、フードなどさまざま。クラブ活動の数は現在200近くあり、200人を超える規模のクラブ活動も出てきました。

 そんなぼくたちの動きに注目した企業や団体から、「田村淳の大人の小学校」宛に仕事のオファーをいただいたり、活動のコラボレーションのお誘いをいただいたりもしているんですよ。

田村淳 氏

コミュニティがそこまで発展した理由は何だと思いますか?

児童たちの責任を持つ姿勢と、組織を活発化させるフォロワーの存在

 児童たちが、“発言と行動には責任が伴う”ということを理解したうえで、他者とかかわっていることだと思います。コミュニティの行動指針にしている「譲歩・寛容・博愛」を持つことが、活発で建設的な議論を生み出します。

 もう一つの理由として挙げられるのは、“フォロワーシップ”です。フォロワーシップとは、リーダーを支える人が、能動的に行動し組織の発展に貢献する機能のこと。たとえば、ぼくのコミュニティでは、「新しい活動をしたい!」と手を挙げた人がクラブ活動を立ち上げ、組織を活性化させていることがフォロワーシップに当たります。フォロワーシップを生み出すためには、手を挙げた人を応援して支える運営側の努力が必要です。

 サービスは、利用者が多くなるほどに質を維持したり、全体に行き渡らせたりすることが難しくなってきます。サービスに頼り切るのではなく、コミュニティを活用して自主的に動いてもらうことで、児童たちの活動の幅はぐっと広がっています。

田村淳 氏

田村さんはどんなまちに住んでみたいですか?

まちは生き物。外部の刺激を受けながら新しい挑戦をするまちこそ生きていると思う

 ぼくは、お年寄りが時代に沿った新しいチャレンジをしているまちに住んでみたい。まちは生き物だと思うんです。新しい事への挑戦を止めてしまうとまちは生きない。人口の多くを占めるお年寄りたちがどんどん挑戦することでムーブメントが起きると思うんです。そんな生き生きとしたまちが理想です。

 まちを生き生きとさせるには、広報も大切だと思います。江戸川区の取り組みを発信しているこの「TOMONI」など、区が発行する広報媒体は外から人を呼び込み、まちを勢いづけるきっかけになる。区の広報媒体を区民以外の大勢の人が読むようになれば、「ちょっとあのまちに遊びに行ってみようか」という流れが生まれるのではないでしょうか。その流れの中から、区の外の人が組織を活発化させようとかかわりにくるような、新たなフォロワーシップが生まれる可能性もあります。

 今後、「田村淳の大人の小学校」の児童がさらに増えた時、果たしてぼくの考えがどこまで行き届くかは分かりません。どのくらいの規模で、どんなサービスをすることがみんなをハッピーにするのか? ぼくも引き続きコミュニティの在り方を模索していきます。

プロフィール

田村淳 氏

田村淳(タレント)

1973年12月4日生まれ、山口県出身。1993年、ロンドンブーツ1号2号結成。コンビとして活躍する一方、個人でもバラエティー番組に加え、経済・情報番組など多ジャンルの番組に出演。300万人超のフォロワーがいるTwitter、YouTube「田村淳のアーシーch」の開設、オンラインコミュニティ「田村淳の大人の小学校」を立ち上げるなど、デジタルでの活動も積極的に展開。2019年4月に慶応義塾大学大学院メディアデザイン研究科に入学。2021年3月修了。タレントの枠を超えて活躍の場を広げている。